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2020年を目標とする“完全な”「自動運転」技術、実現に向けた課題とは

東京大学生産技術研究所の新たな実験所(千葉県)に、実証実験に使える走行試験路が整備されるなど、実用化に向けた取り組みが国内でもいよいよ本格化している「自動運転」の技術開発。

世界中の自動車メーカーとIT企業が、この分野に対し積極的に動いており、上海モーターショー2017で日産が自動運転機能を装備したコンセプトカー「Vmotion2.0」を公開したほか、この分野で一歩リードしているアウディが2020年までに“完全な”自動運転車を実現することを宣言するなど、自動運転車が販売される日も秒読み段階に入った感があります。
そこで、あらためてホットなテーマとなっている「自動運転」技術について、まとめてみました。おさえておくべきポイントは、

・自動運転システムは、実現される技術でレベルがわかれている
・現状「レベル2」まで実現しており、近々「レベル3」も実現しそう
・完全な自動運転を実現する「レベル5」達成には、いくつかの課題がある

といったところです。では、詳細を解説していきましょう。

“完全な”自動運転を実現するための6つのレベル

まず理解しておきたいのは、一口に「自動運転」といっても、実装される技術によって段階がわかれていることです。
段階の定義は国ごとに異なりますが、現在、もっとも標準的とされているのがエンジニア、科学者、業界関係者の団体であるSAE Internationalが策定した「J3016」の定義。ここでは自動運転の技術を6段階にわけています。

Level 0: No Automation(自動化なし)

ドライバーがフルタイムで運転操作を担う段階。従来の自動車の技術レベルです。

Level 1: Driver Assistance(ドライバー支援)

渋滞時や高速道路への合流など、特定のシチュエーションになった場合に発動するシステムが、ハンドル操作または加速・減速のいずれかを実行する段階。この場合の支援システムは、ドライバーが運転動作を行うことが前提となります。

Level 2: Partial Automation(部分的な自動化)

段階的にはレベル2の「ドライバー支援」とほぼ同様ですが、ハンドル操作と加速・減速の両方を自動化することができるようになります。

Level 3: Conditional Automation(条件付き自動化)

渋滞時や高速道路への合流など、特定のシチュエーションになった場合に発動するシステムがハンドル操作や加速・減速以外の運転動作も担ってくれるようになります。ただし、ドライバーはシステムからのリクエストがあった場合には運転操作や判断を行う必要があります。

Level 4: High Automation(高度な自動化)

段階的にはレベル3とほぼ同様ですが、ドライバーはシステムからのリクエストがあった場合でも、適切な運転操作や判断を行う必要がありません。

Level 5: Full Automation(完全な自動化)

シチュエーションを問わず、すべての路面条件や環境においてシステムが運転操作を行う段階です。ドライバーが運転に関与する必要はありません。

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「レベル3」までは達成の目途が付いた状態。国内メーカーの取り組みは?

この分類でいえば、すでに「レベル2」までの段階は実用化されています。たとえばアウディが2016年に発売した「Audi A4」に搭載されている「トラフィックジャム・アシスト」は、渋滞(時速65キロ以下走行)時に先行車両の動きにあわせて、アクセルやブレーキを自動的に調整してくれます。国産車で装備されるようになった自動ブレーキも、レベル2に相当する技術といってよいでしょう。

現在、実用化が目前となっているのは「レベル3」。アウディが、同社のフラッグシップ・セダン「A8」の次世代モデルにレベル3相当の自動運転機能を搭載することを明言しているほか、冒頭で紹介したように2020年までの「レベル5」実現を目標としています。ちなみに、同じく冒頭で紹介した日産の「Vmotion2.0」は、「レベル3」相当の自動運転車となります。参考までに国内主要自動車メーカーの動向を整理すると、以下のようになります。

日産の取り組み

高速道路での渋滞走行と巡航走行をアシストする「プロパイロット」技術を導入した、国内初の「レベル2」相当となる「セレナ」を発売。2020年までに「レベル3」相当のコンセプトカー「Vmotion2.0」の市販化を目指しています。

トヨタの取り組み

独自のコンセプト「Mobility Teammate Concept」に基づき、合流や車間保持、追い越しなど高速道路での運転に対応する自動運転技術を導入した実験車「Highway Teammate」(レベル3相当)を発表済み。2020年までの市販化を目指しています。

ホンダの取り組み

独自の安全運転支援システム「Honda SENSING」(レベル2相当)を導入済み。2016年12月に自動運転の分野でレベル5の自動運転実現に向けた、Googleと共同開発を行う予定があることを発表しました。

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まだまだ多い自動運転システムの課題。技術だけでは解決できない問題も

こうした各メーカーの動向を見る限り「2020年」が、いわゆる「完全自動運転」の“元年”となりそうですが、それまでにクリアしなければいけない課題もたくさんあるようです。

中でも大きな課題となりそうなのは、技術面というよりも開発環境や、自動運転車を利用する人間側の問題でしょう。具体的には、以下のような課題が挙げられています。

機械学習に必要なデータ蓄積の難しさ

人間が運転に関与する必要がない「レベル5」の実現には、AIが不可欠となりますが、その“賢さ”はAIがどれだけ学習するかにかかっています。若葉マークのドライバーがベテランになるのと同様、豊富な運転経験が必要になるわけです。
しかし、そのための経験を公道で積むのは法的に難しいのが現状です。安心して運転を任すことができるだけのデータを蓄積するためには、まだまだ時間がかかるかもしれません。

国ごとに異なる法律や、個人ごとに異なる倫理観への対応

一口に「安全運転」といっても、何を最優先させるのかについては、個人で考えが異なる場合があります。

たとえば一般道を走行中に、突如直前の道路が陥没してしまったとします。ブレーキも間に合わないため、これを避けるためには歩道に乗り上げるしかないのですが、歩道にはたくさんの歩行者おり、怪我をさせてしまうことは必至。
その場合、自動運転システムは「ドライバーの安全を優先する」か「歩行者(他人)の安全を優先するか」の判断を迫られます。

はたして、どちらの判断が“正解”といえるのか。この答えを出すのは、かなり難しいでしょう。しかし、レベル5に相当する“完全な”自動運転を実現するためには、こうしたシチュエーションも視野に入れなければなりません。法律という観点から見れば、過去の判例などを基にある程度の解を求めることができるかもしれませんが、倫理的に誰もが納得する最適解を見つけることは、まず不可能といってよいでしょう。
この点に関しては、技術的な問題の範疇を越え、様々な分野の識者を集め議論する必要がありそうです。

安全かつ快適に利用できる自動運転システムのインターフェイス開発

レベル5相当の実現以前にも、考えるべき問題があります。実現間近となっているレベル3相当の自動運転技術は「条件付き自動化」と呼ばれているように、システムからのリクエストがあった場合には、ドライバーが自分で運転操作や判断を行う必要があります。

しかし、この「リクエストがあった場合」というのが問題。本当に差し迫った状態でリクエストを出されても、とっさに対応できない場合が多いでしょうし、逆に慎重さを優先し頻繁にリクエストを出されるようでは、自分で運転していたほうがマシということにもなりかねません。

このサジ加減は、自動運転システムを利用する人間が、どれだけシステムに慣れるか、またはどれだけシステムに対して信頼感を持てるかにかかっているとも言えるでしょう。この点に関しては、技術的な課題だけでなく、システムと人間が互いに“信頼しあえる”ようなインターフェイスの開発も重要になりそうです。

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さいごに

このように、まだまだ課題の多い自動運転ですが、レベル5まで達成されれば、現在国内で社会問題となっている、高齢ドライバー問題も、自動運転によって大きく改善されることでしょう。また、物流ドライバー不足の解消にも効果が期待されています。自動車業界やIT業界だけでなく、我々の生活を変える技術として、今後もっとも注目すべき存在であることは確か。その動向に注目していきたいところです。

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